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ライバルが、車高153センチを意識して開発した!

投稿日: 2018年4月28日

以前、僕は、メルセデスを買い換えるのに、逡巡していた時期があった。小型だとしてドイツから出て来たデザインは、AもBもマンションの立体駐車場に入らなかった。その時は、同じドイツ車でも、BMWのミニクーパー、いっそクロスオーバーに乗り換えようかと思った。いま、日本自動車輸入組合によると、2017年の車種別販売のトップはミニだった。亭主だけが乗るのではなく、奥方もハンドルを握りたくなる車種らしい。一見、ちいさくて、取り回しも良さそうに見える。丸みを帯びた車体がなんとも、ペットのように、かわいいのだそうだ。女性人気の車である。

話を戻すと、車高153センチのクルマが、これまた同じドイツ車から出た。「Q3」のアウディ社が、自社最小のSUVとして出した「Q2」である。「Q3」の車高よりも8.5センチ低くした高さが、ズバリ、153センチ。日本の高層マンション族を狙ったと専らの評判である。SUVのトランクスペースは、ゴルフバッグが入る。ここで、メルセデスにも、ミニにも、差を付けたことになる。

外車の、しかも、SUVを転がしたいが、ゴルフバッグを載せた横幅と、マンションのパーキングタワーに収納できる車高を条件に絞ると、このアウディの「Q2」に選択肢は狭まる。

昨年の6月に発売されたSUV型のアウディQ2に続いて、今年度は、ワーゲンが「ポロ」の新型車を、ボルボは、小型SUV「XC40」を当月、3月に発売した。こちらの戦争には、車高153センチを必要としているユーザーの声が聞こえにくいのかもしれない。マンションの住民が、傘をさして、153センチよりも車高の高い車の停めてある場まで歩いて行くぼやきが、メーカーに聞こえていないのかもしれない。デザインで買う人もいれば、燃費で買う人もいる。セールスマンの人柄で買う人もいるだろうが、乗り心地で買う人もいる。しかし、タワーパーキングに愛車を休ませておこうという人には、153と言う数字は、大事な数字なのである。

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155cmの価値

投稿日: 2012年5月5日

自動車業界がデザインや内部容量、セフティパッドの数と競ったのは、隔世の感がある。いまや、燃料費を懸念するユーザーに向けて、エンジンシステムから燃料原資への攻防が凄まじい。信号待ちでのエンジンストップから、車体の軽量化。ガソリンから、ハイブリッド、そして完全EV。そして、ジワジワと、ディーゼル機種への拡充。ダウンサイジングを計って、従来以上のハイスペック詰め込んだコンパクトカーへの移行だ。
 
特に、日本の高齢社会構造に応じた小型車の見直しは、注目に値する。この技術は更に、ニューカマーを呼び込む軽自動車への技術注入に拍車をかける。

また一方、昨年春の三陸沖津波による車不足が、中古車市場を加熱させている。 

ユーザーの購入選択のポイントが広がり過ぎて、購入動機の丁寧な追跡調査が行われなければ、メーカーの開発チームも頭を抱えるだろう。

 

こういう中でメルセデスが発表したコンパクトカーへの積極的な姿勢が話題を呼んだ。

特にBクラスは、 全身新車と言うほどの変身である。 テレ東のWBSでの発表会では、日本支社の役員が こう誇らしげに説明した。「車高を下げたんですよ、6.5cm。これは、やはり、スポーティなデザインを若年層のドライバーの方々が好まれるからです。」???  

この説明に私は疑問を持った。いや、苦笑すらした。 カタログにある105mm、最低地上面高の数字を問題にしているのではない。 むしろ、車高を問題にしたいのだが、それに言及していないからだ。

これまで、我が国でAクラスやBクラスが伸び悩んだのには、別の背景があると思わなかったかだ。

 

日本には、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、富士重工業、三菱自工、スズキ、ダイハツなど、世界ブランドの乗用車亜メーカーがしのぎを削っている。中国の120社に比べれば少ないとは言え、欧米諸国から見れば、島国日本には多い割合である。山岳地帯の多い島国日本である。道路事情を考えれば、生活圏とする平野部が限られている国である。だからこそ、日本独特の軽自動車が 走り抜けている。
 
 
狭い道にマッチ箱と言われて来た住宅。そこへマイカーを所有するということは、駐車スペースが要る。例えば、多くの自動車メーカーを擁する濃尾平野では、住宅面積に余裕があるのか、二台の車庫を持つ住宅を多く見受ける。しかしながら、東京、大阪、京都などでは、自家用車を購入しても駐車場に頭を悩ますと言う。
 
マイカーでありながら、雨が降った日など、自宅まで手荷物を抱え、傘をさして帰るという、笑うに笑えない日常が身近なところで見受けられる。自宅よりも遠く離れた場所に停めてあるため、不用心で車中荒らしも盗難も防げない。不便だから手に入れたマイカーなのに、不便が解消されない。昔のように、愛車を洗車するという光景を目にしない。狭い島国で、住宅と空き地の二重を要するのだ。そこで、空に向かって住宅地を高層化する。マンションの林立である。しかし、ここにも駐車場の台数に限りがある。で、パーキングタワーを併設することになる。

 

  明和工業というメーカーをご存知だろうか。おそらく、日本のパーキングタワーのーカーリフトの多くを征しているのではないかと思われるメーカーである。
問題は、自動車メーカーの開発設計者とセールスの現場力の拮抗で、ステップワゴンタイプの車が家族サービスに適していると売る。渋滞時にも運転し易いと、ドライバーズシートの視野の高い車が売れる。ここに悩ましい問題が持ち上がる。
 
目的地へと走らせる車に問題はないが、帰宅時の収納に適しているかどうかで、購入動機が崩れることをメーカーは知っているのだろうか。つまり、マンションタワーに納車出来る車種に制限が生じるということだ。いかに広告がそそっても、いかに燃費が良かろうが、最後の関門で、車種変更となるのだ。
 

現に、私がダウンサイジングしようと、メルセデスBクラスに決めたのだが、買い留まってしまったのは、車高だったからだ。155cm以上あったBは、諦めざるえを得なかった。

そして、担当セールスマンに、この車高のために、どれだけの潜在購入意向の高いユーザーが 、断念したか、メーカーのトップは認識しているのだろうか、いや、していないだろうと、嘆いた。機会があれば、レポートを出して置いて欲しいとも。自社の車のスペックを比較することはあっても、購入断念の理由に、後数cmの車高が、障害になっているなどとは思ってもいないいだろうと。私は、明和工業の規格を悔やんだものだ。パーキングタワーを発注するクライアントは、一台でも多くを収納して採算に反映したいと思うはずで、メーカーの販売合戦とは全く異なる舞台ですれ違っているのだ。
先の、メルセデス日本側の役員が「スポーティ」だと言い放ったことも、実は、中流所得のオーナーの苛立ちに気づいていないズレではないか。「市場の不満の囁き」をデザインに反映してこそ、 売れていく理由が覗けるのではないか。

 

 http://response.jp/article/2012/04/25/173525.html 

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